(note過去記事)ゲイやバイセクシャル同士のカップルを描いた恋愛ドラマ見たすぎ

(note過去記事:2021年12月12日公開)

 

クィアのみんな〜〜〜!!アンタ最近どんな感じ?ちゃんと野菜とか食べてる?

クィアじゃないのにこのタイトル見てきてくれたそこのアンタ本当ありがとね マジ全員LINE交換しよわら

ちょっと今から唐突に男性同士の恋愛ドラマの話をしますので、最後まで話聞いてってよ、ほら、ここ座んなさい 

 

※重要
以降、男性同士の恋愛を描いたドラマに関するボヤキが続きますが、LGBTQ+全体の視点で見たとき、他の性に比べて、(まだまだ少ないとはいえ)男性同士のカップルを描いた作品が群を抜いて多いという現状も忘れてはなりません。
男性同士のカップルの描かれ方に問題がある、という話以前にそもそも、女性同士のカップルやトランスジェンダーの方を含むカップルをはじめとして、その存在がドラマなどの中で描かれていないケースが数多くあります。
男性-女性、シスジェンダー-非シスジェンダー、恋愛や性愛をする-恋愛や性愛をしない、などのように、LGBTQ+という括りの中にもさらに多くの社会的格差があるという事実と自分の特権性を噛み締めながら、書きます。

 

ゲイ(バイセクシャル)とゲイ(バイセクシャル)が付き合うドラマ日本にほとんどないかも・・・。

いやいや、男性と男性が付き合う話なんて最近増えてきたでしょ?

数年前も『おっさんずラブ』社会現象にまでなってたし、『チェリまほ』なんかも人気だったし、最近は『消えた初恋』なんてジャニーズが主演してるドラマも増えてきてて、もうホントすごい勢いだよね。あと、あんまり知られてないけど『Life 線上の僕ら』も評価高いみたいだし。

と思ったそこのアンタ!!!!

 

うん、うん、確かにね。確かに、確かに、と・・・。

確かに本当におかげさまでドラマ増えてきてて嬉しいんだけど、上に挙げた4つのドラマに共通すること何だかわかる人いる?じゃあ、今日は12日だから、出席番号12番の鈴木!

ん〜、ちょっと自信ないんすけど・・・。

あれっすかね、両人物(少なくとも片方)が最初から同性が恋愛対象であるということを設定上明らかにすることなく(むしろ異性愛者的な描写を含むこともありうる)ドラマがスタートし、「男性として」ではなく「人間として」魅力的であるという思考を一度経由したのちに、二人の恋愛が進展していく点でしょうか。

それに関連して、多くの現実世界のゲイやバイセクシャルは、職場や学校などで恋人を見つけることが非常に困難であるためにネット上やマッチングアプリ、ゲイバーなどを介して出会いの場を探求せざるを得ないにもかかわらず、これらのドラマでは、そのような困難がなかったかのように、まるでよくある男女カップル恋愛ドラマのように「自然」な出会い方をしています。

こんな感じでどっすか。

 

正解です。

 

ほぼ鈴木くんが答え言っちゃいましたが、ここから僕も一応話します。

いや!!!ね!!!いいんですよ!?!!セクシュアリティは流動的だもの!!!!性ってグラデーションだから、100%なんて決めるのも変だし!!!!本当にそれはそう。
いやでもね!?!?!!一旦ちょっと待って。この世の男性同士のカップルってどう考えてもゲイやバイだと自認してる人同士の恋愛が多いと思うんですけど違うんですか!?!? 
この世の男性同士のカップルの大半がまさかのノンケ落ちスタートなんて・・・そんなの・・・。そんなの・・・あったらすごい

 

いわゆる男女のカップルドラマって異性愛者(と自認している人)と異性愛者(と自認している人)が付き合ってるのがほとんどだと思うし、誰もそこ疑ってすらないと思うのよ。なのになぜ男性同士のカップルになるとそれが自然に作られないワケ・・・。 

さっきも言ったように、そういうカップルも現実にいると思うし、そういうカップルを描いたドラマがあっても全く構わないんだけど、順番と比率がちょっと不自然な気がするんだよね。こういうイメージが先行してしまうと、現実とは異なるように社会が受容してしまうケースが多くなると思うのよ。


今から僕の話します。

当時、異性愛者男性に淡い恋心を持っていた僕は、日々の苦痛を耐え忍ぶために、『おっさんずラブ』から勇気をもらっていました。ああ!今は辛いけど、これからも好きでいつづけたら、異性愛者の彼ももしかしたら僕に振り向いてくれるかもしれない!諦めるな自分!愛は最後には勝つのだ!と、泣いては励まされ、泣いては励まされ、という日々を送ってたワケ。まじ健気じゃない?

が、現実はそんな甘くはなく、まあね、盛大に振られましたよね・・・。
あはは・・・。あれ待って・・・涙で・・・画面が見えない・・・。ウチって笑顔の時が一番かわいいのに・・・。あでも泣き顔もよく見たらかわいいかも!
はい。 でね、ふと思ったワケです。もちろん『おっさんずラブ』はありがとう。おかげさまで大恋愛ができました。最高の思い出になった!
でももしもあの当時、ゲイと自認する男性同士の恋愛を描いてくれるドラマがあったら、違った形で人生に希望を見いだすことができたのではないかと・・・。無理に自分をすり減らさずに人を愛することができたのではないかと・・・。そう思ったの・・・。ちょっと苔ちゃん泣かせたの誰ーーーーッ?!??!?!?!?

 

僕の話しちゃったけど、これらのドラマはきっと社会の側の男性同士の恋愛に対するイメージにも多かれ少なかれ影響を与えているはずで、その点が少し心配になってしまう。もしも、ゲイ自認の二人が幸せそうに恋愛するドラマがあれば、きっと『おっさんずラブ』のことももっと心置き無く愛せただろうなあとか、そう思うわけであります。

 

なんでこういう状況なのか、ちょっと考えよう

ゲイ自認のカップルが出てこない話はおそらく、これらのドラマの多くが「BL漫画」を原作としている点に深い関わりがあるような気がしております。

これまでのBL漫画では、上で述べたような、異性愛者が(多くは)ゲイに迫られて次第に惹かれながら付き合う、あるいは異性愛者同士が次第に惹かれ合う、というパターンが「王道ルート」のひとつになっているような傾向がある気がするワケ。それでこそ純愛だ!的な。

実際BLに関しては、女性のファンタジーが過度に投影されているという批判や、実際のゲイの恋愛のあり方が描かれていないという批判が近年少しずつなされるようになってきたわけですが(そうじゃないものも勿論あります)、それらのBL漫画が当事者以外を多く含むファン層からの支持を獲得する中で人気になり、次々とドラマ化されるようになった結果、このような状況になっているんじゃないかね、ということです。

 

基本的にテレビドラマって、テレビ局オリジナルのものか、人気の既存原作をドラマ化するっていう2パターンがあると思うんだけど、後者に関しては現状売れている漫画がそのような「王道」なBL漫画であり、前者に関してはきっとリアルさを含んだドラマ企画が採用されにくい環境(あるいは視聴率が取れないのではないかという懸念)なのが背景だったりするのかなあ〜とか思ったりね。

いい原作〜〜〜〜!!!!!あるいは最高なテレビ局社員〜〜〜〜!!!それに広告つけてくれるアゲなスポンサ〜〜〜!!!!ほんまよろしく頼むよ〜〜〜〜!!!

 

これらをどんどん掘り下げていくと、大変恐ろしい結論にたどり着きます。

テレビドラマになれるのは「異性愛者向けの同性カップル」(言葉を選ばず言うと「異性愛者が見ても大丈夫な」同性カップル)のみではないのか、と疑念です。

 

男性同士の恋愛自体や、男性に欲望を抱く男性という存在に抵抗があるという視聴者に対して、これまで述べたようにはじめからゲイやバイセクシャル設定ではない描き方をしてきた他、しばしば「〇〇が人間として好きなんだ」といった形の言い訳が用いられてきましたし、これらのドラマの広告でも「性別を超えた恋愛」といった謳い文句がくどいほどに付けられてきました。
そんなの(性別を超えてるはずの)異性間カップルのドラマでは言われないのにね。アハハ。

職場や学校で自然と出会うという設定も、既存の異性間恋愛ドラマが踏襲してきた受け入れやすい枠組みの中で描いているという意味では、万人受けしやすくするための設定というふうに言えるかもしれない。(これに関しては、異性間恋愛ドラマでもマッチングアプリスタートのカップルがもっと見てみたいです。)

また、ここまであえて触れてきていなかったけど、『きのう何食べた?』は両者がゲイであることを明かしていたり、いわゆるゲイらしい出会い方をしている点で非常に貴重でありがたい作品です。

しかしながらこれも、あえてスキンシップや性描写(セックスやキスシーン)を避けてほのぼのとした生活を前面に押しているという点においては、同性愛に抵抗がある人でも「受け入れやすい」ドラマとして受け止められているのではないかという疑念を拭うことができなくて悲しい。(本当にいい漫画なのにね)

 

ウチらって異性愛者に認められたくて恋愛してるワケじゃないのにな〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!

てか今気づいたんだけど、恋愛してないゲイを描いてるドラマもめっちゃ少なくない?!?!?!?!何??!!?恋愛してないゲイは存在しないってこと??!?!!じゃあ今ここでキーボード打ってる恋愛してないゲイって一体何??!?!?!!!??!!?妖精!??!?!?!?!

妖精だったら意外と悪くないかも

 

いやあのほんとにありがとうございますって言いたい

これ何度も言いたいんだけど、いやほんとにこれまでのドラマには感謝の気持ちでいっぱいなの・・・。原作書いた人も、それをテレビ局の会議室でやりましょうって最初に声あげた人も、それに賛同した人も、そこから脚本考えた人も、セット作ってくれた人も、役者さんも、みなさま本当にありがとうございます。ボーナス上げてあげてほしい。

これらのドラマのおかげで、実際「LGBT」の認知率が大きく高まったと思うし、何はともあれ男性同士のカップルが存在するという事実に対する抵抗感も少しずつ減っていってる気がしている。

そしてきっと、今この瞬間、テレビ局の中でたくさんもがきながら「いやいやこんなドラマじゃ視聴率取れないから」なんて言葉に苦しめられている社員さんもいるに違いない、そう信じさせて〜〜!!ほんと・・・リアルになればなるほどターゲットが狭まってしまうから視聴率って下がっていくんだろうな・・・。

でもやっぱり多大な影響力を持つドラマだからこそ、男性同士カップルの中でも「認められるカップル」と「そうでないカップル」(あるいはLGBTQ+の中でも「認められる人間関係」と「そうでない人間関係」)とを分断してしまいかねない今の状況が超悔しいワケ。

別にドラマだからって必ずしも100%現実に即しているべきだとは思わないけど、テレビドラマの社会に対する影響力を考えると、現在逆境に立たされている社会的マイノリティを描く際にはその点考慮されて然るべきじゃないかなあって思うのよ。
しかも、現状基本的な人権が保障されていない中でドラマだけ見てると、「僕たちってただの金儲けのためだけに消費されてんのかな・・・」とかも不安になってきちゃうわけよ・・・。

 

こういうことボヤきたくなっちゃうような、未だ不平等な社会構造と、これまでのドラマの蓄積のなさが憎いッ!!!あたしゃ憎いよッ!!!ウワ〜〜ッ!!絶対いつかみんなで気持ちよくドラマを見たいよ〜〜ッ!!!そしてみんなでノンフィクションの世界に希望を持ちたいよ〜〜ッ!!

 

おわりに

クィアのみんな〜〜〜!!!!みんなは人に認められる前から、そのままで存在していていいんだよ〜〜〜!!!そういう風には思えない日々が続くけど、それでもやっぱりそのままで存在していていいんだよ〜〜〜!!!てか、ウチらって、ウチらのままでしかいられんじゃん?

 

いつか、よりリアルな男性同士カップルのドラマが見られることを願いながら、そして何より、シスジェンダーゲイ男性同士カップル以外のクィアの人々を描いたドラマがもっと世の中に増えることを祈りながら、僕は今からネトフリの海外クィアドラマに逃げ込んできます。